『平均寿命と健康寿命の違いとは?「健康寿命」が大切だといわれる理由』

日本人は平均寿命が長く、長寿大国ともいわれていることをご存知の方は多いでしょう。長生きするのは喜ばしいことではありますが、ここで非常に重要なキーワードとなるのが「健康寿命」です。 今回は平均寿命と健康寿命について解説するとともに、老後を健康的に生き生きと過ごすヒントについてお伝えします。

 

「平均寿命と健康寿命の違い」

 

まずは「平均寿命」と「健康寿命」の違いについてご説明します。

【平均寿命とは】

平均寿命とは、0歳時点で何歳まで生きられるかを統計から予測した「平均余命」のことです。わかりやすくいえば、特定の人が生きられるおおよその年齢となります。

この数字はいろんなところで取り上げられて目にすることも多いので、自身のおおよその寿命の目安にされていたり、老後資金の計画や人生設計を考える根拠としていたりする方も多いでしょう。

ただ、予測の時点での死亡率が続くと仮定して算出しているため、医療の進歩や生活環境の変化によって、平均寿命は変わる可能性があります。

健康寿命とは】

では一方、健康寿命とはなんでしょうか。健康寿命とは、日常生活を制限されることなく健康的に生活を送ることのできる期間のことをいいます。「日常生活の制限」とは、介護や病気などを指し、自立して元気に過ごすことができない状態です。

とても長生きの方でも、長期間にわたり介護や入院が必要であれば、健康寿命は短いということになります。

つまり、平均寿命と健康寿命にあまり差がないと、亡くなる直前まで健康に過ごしていたということになり、平均寿命に比べて健康寿命が短くなると、不健康な状態が長いということがわかります。

 

 

「平均寿命と健康寿命の差は拡がってきている」

 

長生きするだけではなく、健康で過ごせる期間である健康寿命を延ばすことが大切だとおわかりいただけたと思いますが、近年気になる現象が起きています。

【平均寿命と健康寿命の差とは】

厚生労働省のデータによると、近年、平均寿命と健康寿命の差が拡がってきています。
2001
年の男性の平均寿命が78.07歳に対して、健康寿命69.40歳で、その差は8.67年でした。つまり、統計的には、健康でない状態になってから8.67年後に亡くなるということです。

同じ年の女性の平均寿命は84.93歳に対して、健康寿命72.65歳で、その差は12.28年でした。

それが2013年のデータでは、男性の平均寿命80.21歳に対して健康寿命71.19歳で、差は9.02年。2001年の8.67年と比較すると差が大きくなっていますね。

2013年の女性のデータでは、平均寿命86.61歳に対して健康寿命74.21歳で、差は12.40年となり、2001年の12.28年と比べて、やはり長くなっています。

データ上では、病気などによって介護や支援などが必要になってから亡くなるまでに、男性では約9年、女性では約12年もの時間があることになります。

このデータから、平均寿命に着目することより、健康寿命を延ばしていく必要性がよくわかりますね。

この差が拡がらないよう、健康維持に努めて介護や寝たきりといった生活をできるだけ少なくすることが大切です。

 

 

「支援や介護が必要になる原因」

では、支援や介護が必要になる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。以下の表は、要支援者・要介護者別にみた介護が必要となった主な原因です。

 

要支援者・要介護者合計での1位は「認知症」、2位「脳卒中」、3位「高齢による衰弱」という結果が出ています。これ以外の原因として、関節疾患、骨折・転倒などもあがっていますが、これらの骨や関節、筋肉などの運動器の障害をロコモティブシンドロームといいます。

ロコモティブシンドロームは加齢により誰にも起こりうる現象ですが、骨折や転倒につながり、それが原因で介護が必要な生活になる可能性が大きいことから、予防が非常に重要だといえるでしょう。

 

 

「平均寿命と健康寿命との差を埋めるために自分ができること」

 

平均寿命と健康寿命の差を埋めて、介護生活につながってしまう原因をできるだけ遠ざけるためには、どのようなことができるのでしょうか。

健康でアクティブに過ごす

ロコモティブシンドロームを避けるには、筋肉・関節・骨などの運動機能を維持することが大切です。

シニアの場合、飛躍的に筋力をアップさせることが目的ではなく、あくまでも運動機能を落とさないことが目的なので、「ハードなトレーニングをしなければ」、と気負う必要はありません。

散歩を兼ねたウォーキングや簡単なストレッチ、1階分だけ階段を使って歩く、など日常生活でできる範囲で無理せず行いましょう。

また、認知症予防のために、脳を積極的に使って活性化させたいものです。知らなかったことを学び直す、読書をするなどの知的活動や、絵を描いたり短歌や俳句を作ったりするなどの創作活動は脳にとっても、精神面にとっても大きなプラスの影響を与えます。

忘れてはならないことが、このような肉体的・精神的にアクティブな毎日を支えるのは、食事と睡眠ということです。食事では栄養面にも気を配り、バランスよく食べることを意識しましょう。また、年齢を重ねると睡眠時間が短くなったという方もいるため、ご自身の睡眠の質が満足いくものかどうか、今一度振り返ってみることも大切かもしれません。

健康で長生きするための情報は、以下のページでも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

「自分らしい豊かな生活を維持する」

健康寿命を延ばし、生き生きと健康に過ごすためには、自分らしい生活スタイルを維持することが大切です。高齢者であるから、または体力が衰えてきたから、という理由で多くのことを制限してしまうのは、大変もったいないことだと思いませんか。

そのために必要なことは、自分の体と相談して無理をしすぎないことと、元気なうちから医療的ケアや介護ケアが必要になった場合のことを考えておくことではないでしょうか。